夢売るふたり★★★☆〜男と女を縛る呪い〜


  ーー人間最大の謎は、男と女
「新しい店」という夢の為、夫婦で結婚詐欺をするはなし。


女たちに結婚詐欺を働き「いっときの夢」を売る夫婦。
妻(松たか子)が指示し、夫(阿部サダヲ)が女たちを騙します。
松たか子秋元康阿部サダヲがAKBみたいなもん。←失礼


巧みな術で女たちを騙す夫婦。
「基本的に嘘はつかず自分をさらけだす」、「ちゃん付けで呼んでいたのに去り際に急な呼び捨て」、「現実的なことを言われ嘘がバレそうになったら逆ギレ」、「DVののち抱擁」といった完璧な恋愛術が学べます。

で、演技達者な登場人物全員が「普通の人」。
全員揃ってメリル・ストリープ(※最も演技で難しいであろう「普通の人」を演じられる普通じゃない女優代表・メリル)
普通の人々が普通ではなくなっていく様が壮絶でした。
男と女は違う生き物って思ったね。でも、悪どいことする人はその両方に存在するし、普通の人でも悪事を働く方向へ簡単に転がってゆく。結婚指輪って、元々は「お互いを逃がさない呪いのアイテム」だったと聞いたんだけど。やっぱり「家族」って良くも悪くも「運命共同体」で、その絆は「呪い」にもなっていると感じました。(そもそも、絆という言葉も、奴隷を繋ぎ合わせる楔が由来だ。)


役者陣の中で特に凄いのが松たか子この画像だけで怖い。

【※ネタバレ感想】
 こりゃ「夫婦(オトコとオンナ)」のはなしですわ。男と女は人間最大の謎だね。
 あんな顛末になったのは、松たか子木村多江の家に侵入して包丁落とした為。松は、子持ちの木村に対してのみ罪悪感を覚え、同時に彼女に対して嫉妬をする。子を欲し案ずる母性を生まれ持つ「オンナ」だからそうなったんじゃないかな。「オトコ」である阿部サダヲには松の心境(揺らぐ母性)に気づけなかった。松と阿部じゃ子供に対する考えが違うから。「オトコ」と「オンナ」が異なる故の悲劇。(阿部が木村一家と家族団欒しているシーンのあとに、松が生理用品をつけるシーンがある。これは松に月のものが来たってことで、彼女は子を授かってない=子供がいないってことだよね。)
松たか子が怪演するものだから「女って怖い」と言われてるけど、十分「男」、阿部サダヲも怖いよ。やることやってんじゃん。詐欺を働くことに悪意を感じない女も怖いけど、そんな妻に狼狽しているのに他人を欺き続ける男も怖い。
 ラストシーンは「離れるのか離れないのかわからない」二匹のカモメを、夫婦がそれぞれ見て終わり。たぶんあのカモメたちはつがいで、「良くも悪くも夫婦ってものは運命共同体」ってことを表す映画だったんじゃないかなぁ。主人公たちに相応の罰が下されてないから「悪事を働くと返ってきますよ」って話では無いよね。人間最大の謎「オトコとオンナ」を運命共同体にする「夫婦」って関係、ヤバい。
 好きなシーンは松たか子が橋の上を走るシーン。警察が来て、いい感じだった男を置いて、不動産のチラシだけ持って逃げる。このチラシは、夫と話していた「次の店候補」で、彼らの「夢」そのものなんだよね。結局、走ってるうちに風が吹いてきて落としちゃう。夢が散っちゃった。希望の象徴だったスカイツリーは、今も昔も立ち続けてるっていうのに。

(渋谷ヒューマントラストシネマにて鑑賞)