プラダを着た悪魔★★★☆〜お姫様の皮を被った才能主義〜


日テレで見たら、
メリル・ストリープ(吹替)が夏木マリだった。

湯婆婆?
アン・ハサウェイ千と千尋なの?

 実際『千と千尋の神隠し』で主人公が湯婆婆に改名を強いられたように、ヒロインのアンドレアはメリル・ストリープに本名で読んでもらえない。「自分では望まなかった仕事」で成長する物語も共通している。ただ『千と千尋』は、実は「家計の都合で水商売に就く少女*1」の話なのだけど。

 『千と千尋』のように、この本作にも裏の顔がある。プラダを着た悪魔』は「ダサ子が仕事で成長」譚ではなく「埋もれていた天才を鬼才の嗅覚で釣り上げられ、本人の努力で一人前となった映画」である。つまり普通の女の子っ☆映画ではない…!!一般人である観客が共感しやすいのは、本来ならむしろ運が無い努力の秀才・エミリー。アンの方は運も才能もある天才型。メリル・ストリープの言う通り「人を踏み台にしないと成り上がれない世界」でキャリアを築ける逸材なのである。「お姫様」よりも「女王予備軍」が相応しい。作品自体の思想も、作中のメリル・ストリープと同じく非情な才能主義(に見える)。
 多くの女性たちが共感した現代ガールズムービーなのに、実は「才能無き者は淘汰される」、一般的人間とっては非常な話。世の中で働く(天才というわけではない)多くの人間を切り落としとるやんけ!!!まぁ、元々プリンセスムービーも「お姫様」な時点で物凄い運に恵まれている。共感系映画は「実は天才の物語」をいかに「凡人があがってゆくシンデレラ・ストーリー」に魅せるかが一つのキモ。プラダを着た悪魔』はその点で成功している。


 今見ても軽快なテンポ、濃いキャラクタ、素晴らしいファッションを楽しめる作品。ついでに日テレは「オスカー女優対決」と宣伝していたが「ヒロインが天才」であることが前面に出されていない故に、結局は「天才の誇り高さ」を見せるメリル・ストリープが持っていく。メリルの完全勝利(アンもあの若さで喰われていないだけ凄いが)。ちなみに緊迫シーンにアン・ハサウェイの胸揺れがあるので集中できません。

【ネタバレ感想】
 あれだけセンスあってダサ子に戻るのはねーよ!!「オシャレしていた自分は偽りの自分だった」ということらしいけど、それなら「ファッションをバカにしていた貴方にパリに行く権利は無い」と涙を流していたエミリーの言葉が事実に…。エミリーかわいそう…。

日本テレビにて鑑賞)