華麗なるギャツビー★★★☆〜流れ星、下から見るか、横から見るか〜


 前半は100点中200点!!!最高の饗宴シークエンス!まるで当たりの音箱(クラブ)に居るよう!!蜷川実花の『ヘルタースケルター』みたいなもん」と原作ファンに言われるだけあって、監督が静的ドラマ下手だから中盤はダレるぞ!


 バズラーマンの映画は新宿ゴールデン街みたいなもので、age&ageテンションを突っ切った『ムーランルージュ』は傑作だった。そのラーマンがアメリカ文学の頂点『グレイトギャツビー』に挑む。。「まるで白縄の先端がほつれゆくような、そして当人たちもそのほつれゆく運命を自覚しているかのような………」そんなフィッツジェラルドの「都会人の儚げ」をラーマンは描けるのか!?答えは出来なかった!!!!ラーマン出来ない!!アメリカ幻想の二重性」取っ払ってメロドラマになっているぞ!原作無しにしても中盤のダレ、なんだよ!!!


 原作ファン激オコぷんぷん丸以前に、映画としてテンションが一定していない(修羅場&カーチェイスからは取り戻す)ので正にrotten支持率批評家50%観客70%の出来である。テーマである「アメリカ幻想の二重性」も又中途半端。しかしながら、バズラーマンの画面自体が「一夜かぎりの饗宴」的なので、その祭りの虚しさを一作品生命を以って表現したことにはなる。やはり前半一時間のageageっぷりは見もので、後味は割と良いので劇場で見る価値は大いにある。

【ネタバレ感想】
 「僕はあの星のようさ、永遠に上昇する」とレオ様が言うシーン……星の描写がダサすぎる上に碇シンジ君みたいなことを言い出し滑稽だが、そもそもあれは流れ星で、流れ星は消滅しゆく運命である。「永遠に上昇って、あれ燃え尽きる最中じゃねーか!」とツッコミたくなる迷シーン。当時の天文学状況は知らないけど、流れ星=消滅過程って常識では?ある種ギャツビーの「上辺だけ」な無教養人格が露呈しているシニカル描写かも。レオ様は前半に「今日は雨だ。ニュースペーパーに載っていた」と天候について発言しているので余計「金で情報は得られるが本人の知見はお粗末」な始末。あのあと、観客の予想通り、ギャツビーはどんどん燃え行き、最後は星が堕ちるようにプールの底に沈む。

 しかし、ギャツビーは自らを「自然物」の星と表したことに対し、彼が欲しがる緑の灯は「人工物」。似ているようで、実は“その生まれからして違う”2つである。

 説明的、暗示的だと思った描写の数々↓
・電話という「介入者」。最初、トム一家の食卓に電話が入り空気が壊される。その後、純愛であるはずのギャツビーとデイジーのデートでも電話が入り、ギャツビーはまるでトムのような荒々しい姿を披露て調和を破壊。ちなみに電話は最後まで「介入者」であり続ける。
・ギャツビーの「威厳」アピールに引くデイジー。城に引き入れるシーンで、ギャツビーは「セレブが沢山来る」と自慢するがデイジーは微妙なリアクション。その後、パーティーを抜け、デイジーは「貴方とただ逃げ出したい(I wish we could just run away)」と告白するのにギャツビーは「それは世間体が悪い」と言って拒否する。彼女の為だけに建てたはずの城が、逆に彼女との愛の成就を阻んでしまっている。ギャツビーは愛する人と富、その両方を欲してしまった…。
・ギャツビーが「人妻にを安心して紹介できる男」と紹介された直後、彼の目的が「人妻・デイジーとの逢瀬」であることが知らされる
・主人公のギャツビーへの第一印象は「安心できる人物」であるが、そもそもギャツビーが主人公に近づいた理由は、彼がデイジーの従兄妹だから。目的の為に利用する為だった。
格差社会、醜悪性、偶像性、虚偽性をただ一人だけ公平に見る「神の目」のカット。破滅の暗示。
・慌ててギャツビーが壊した時計と、同じく焦ってデイジーが落としたライターの形が似ている。
・主人公はNYに初めて足を踏み入れた際、その街に希望を見る。しかしながらその前のシーン(現代パート)で彼はアル中や不眠になっており「NYで悲劇が起こったこと/NYが夢と希望に溢れた場所ではなかったこと」は最初から提示されている。
・庶民出身のギャツビーは上流階級の人間にではなく、同じ庶民に殺される。
・幕開けと幕引き。序盤、カウンセラーが「Gatsby」という文字を書類に記す。ラストは主人公が「Gatsby」の文字に「The Great」を記して終わり。名前だけ知られる謎の人物がどのような造型だったか明かされ、相応しい形容詞がつくまでの映画。

 これらの要素が大袈裟すぎるほどに明示されるので、ここまでやるなら原作の「ギャツビーのパーディーで自動車事故(そしてそのトリック)」シーンは入れた方が締まった気がする。

(TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン7 M-27にて鑑賞。中心からはズレるが見やすい。)