今宵、フィッツジェラルド劇場で★★★★★〜探偵とラジオの共通点は?〜


 この映画、最初に探偵が出てきて「もう仕事な〜んも無い」と愚痴りだす。そのあと主役である、打ち切りを控えたラジオ音楽番組の面々が登場する。探偵とラジオ、2つは「時代に取り残されたもの」同士。つまりはオワコンってことで、オワコンばかりが出てくるオワコンたちの映画である。


 明日ラジオは終わると言うのに、キャラクタみんなが前向き。こう書くと「老いてもハッピーに!」を提唱する、Bunkamuraでかかるような定番作品っぽいんだけど、突如死神が現れたり、どこか不穏。ていうか下ネタだの天使だのカントリーだの探偵だの色々出すぎてシッチャカメッチャカ。。。そんなバランス感や老練されたカメラワーク含め大変コク深く、好きな人にとってはこれ以上無い豊穣だと思う。ことこと3日間寝かせたカレーは、思いのほかスパイスが効いていた!・・・みたいな映画。
 それもそのはずで、監督はロバート・アルトマン。『M★A★S★H マッシュ』で衝撃を与えた辛口の作家は年老いても尚、その持ち味を崩さなかったのである。本作は結果的に彼の遺作になった。アルトマン本人はこれを遺作にする考えは無く、次回作構成を練るさなかでの逝去だったらしい。「遺作らしい」本作が本当に遺作になっちゃうなんてなんか映画とリンクしてるような・・・。ともあれアルトマンは最後までカッコいい。なんたって「老人の死は悲劇じゃない」なんて台詞を挿れちゃうんだから!極めつけはこれ。

「どうせ最終回だ
パイオツか
ボインでも何でも好きに言えばいい
ショーをぶち壊せ場いいさ
飲んで酔っぱらおう」

 正直大して書くこと無いんだけど、もうこの言葉だけで素晴らしいと思います。


【ネタバレ感想】
 「俺は忙しいから恋愛小説なんて読まない」と言った男が死ぬのが面白い。愛を軽視した男が天使に殺されるとは。。やっぱ愛だよ、愛!メリル・ストリープの娘(リンジー・ローハン)が冴えない職に就いたのも現実的で、しんみりするね。

(DVDにて鑑賞)