ブルー・ジャスミン★★★★〜転落の先に残るのは?〜


 『マッチ・ポイント』のスカーレット・ヨハンソンは、実はギリギリに決まったキャスティングで、監督は「やれるか不安で仕方なかった」らしい。元々はケイト・ブランシェットに用意された役だったとか。今となっては「え!?ヨハ以外ありえん。むしろ何故ケブラ…?」と思ってしまうけど…。それでもって、ウディ・アレン熱望のケイト・ブランシェット主演作である。


 DarkComedyと銘打った本作は金持ち女の転落劇。ラインとしてはロンドン三部作に近いかな。タイトルのBlueJasmineはヒロインの好きな局、及び名前。
 ケブラは大金持ちと結婚した専業主婦。夫役はアレック・ボールドウィンボールドウィンは顔から浮気しているので勿論不倫されている。転落劇なので勿論ケブラは不幸一直線。


 ここでヒロインの人物紹介…といきたいところだけど、ファッションで全て表してしまっている。彼女はFENDIのサングラス、エルメスのベルト、ビトンのバッグ、以下略、以下略、と全身ハイブランド。妹に連れて来られた庶民街(貧困街寄り)でも、機能性もあったもんじゃないこの身なり。勿論コミュニケーションでも浮きまくり。ナンパしてきた兄ちゃんにも「私はハイソサエティの人間なの」といった態度。当然のように抗鬱剤ジャンキー。彼女自身は金を稼ぐ能力もバックグラウンドも無いわけで、これじゃぁ堕ちるしかない。
 そしてケイト・ブランシェットなんだけど「もうこの役しかない」ってくらいのハマり役。なにしろ、アート系モデルまでやってらっしゃるケブラさん。「痛々しいハイブランド女」も完璧にキマるのだ。その上で「笑えるほどの痛々しさ」を演じてくるから迫力満点。"DarkComedy"どころじゃない重さも残るが…。

【ネタバレ感想】
 おハイソ気取り女に残されたのは「大好きな曲」だけ。悲哀が土台にあるけれど、金も友も無くても「藝術」だけは姿を変えず寄り添ってくれる。そういう意味では『地球は女で回っている』に似た、一粒の希望ラスト。監督の藝術への敬意だ。

(Angelika Film Centerにて鑑賞)