ミヒャエル★★★〜六日目の蝉〜


  ーー表向きは平凡な勤め人だが、ミヒャエルは自宅の地下室に誘拐した子供を監禁している小児性愛者だった…。サイコスリラーではなく、ホームドラマのように異常者を描く演出が評価され、監督第1作にしてカンヌ映画祭コンペティション部門に選出された。

さえないオッサンがショタを監禁してるはなし。


男の子を誘拐して地下室に監禁してるって言うのに、主人公のミヒャエルは本当に「普通」なんですよ。
それなりに友達もいて、それなりに仕事をしていて、女性に言い寄られたりもする。そして普通に暮らしている。
ザ・普通のさえないオッサン。
きっと、普通に、職場のギャルに裏で呼び捨てにされてるでしょう!!
「今日ミヒャエルがさ〜〜ベルト忘れて、パンツ見えてんのw黒ビキニだったww」「マジー!?ヤバくなーい!???」とか言われてますよ!給油室での格好のネタですよ!!


少年とのやりとりも結構普通。
一緒に食器を洗って、パズル遊びなんかもして、クリスマスにはプレゼント交換をする。
休日に公園で遊ぶ様は、まるで親子のようです。
しかしこのミヒャエル、結構「厳格な父親」ヅラ・・・。
「望遠鏡のレンズをあわせてやったぞ、っておい!ズラしてんじゃねえよ!!」とか厳しめ・・・。
職場のギャルに見つかったら、「ミヒャエル家ではカミナリ親父やってた〜〜ウケる〜!!!キャハハハハッ!!!」と陰口叩かれそうっすよ!(※本作にギャルは登場しません)


本物の親子のような顔をして誘拐した子供と接してる、って描写は、
『八日目の蝉』を少し思い出しました。
まぁ、ミヒャエルは性欲ギンギンなので、「6日目の蝉」ぐらいですが。

「怖くない感じのゲテモノ系かい!どうやってオチつけるの?」と好奇心だけで見に行きましたが、終わり方にシビれました。クール。

【※ネタバレ感想】
確かにミヒャエルは淡々と普通〜な感じなんですが。その「日常」の中に、マルクス・シュラインツァー監督の映画の巧さが潜んでいました。少年が風邪をひいたら、「まずい」と呟いて山に穴を掘りに行ったり(遺体を隠す為の墓穴ですね)。スキーで転んで雪に塗れると物凄い不機嫌になり、プライドの高さが現れていたり。大人の女性に興味はあり、恋愛関係も紡げるが、プライド高い割に臆病なので怖気づいてしまったり。腕力で抑圧できる少年を誘拐し、暴行・性的いたずらすることも納得な人格が静かに描かれていました。つまりミヒャエル、クズ!

ヒューマントラストシネマ渋谷にて鑑賞)