ミスト★★★★〜脇役だって人である〜


  ーーこの子と約束した、必ず守るとーー
息子とスーパーに行ったら突然、窓の外に霧が出現...!血に塗れた人間がスーパーに入ってきて、「外は危険だ!!」と絶叫!一体外になにが!?スーパーから出られないッ! ってはなし。


なにが起こってるかもわからないし、外にも出られない…。
非常事態が来ても、スーパーにある物でどうにかするしかありません。
アメリカ版の『漂流教室』みたいなもん。


頭脳をフル回転させ、スーパーの商品を使った大人たちががんばります。
つなひききしたり。
大人たちが、本気でつなひき!!!!

運動会の保護者種目を思い出す光景でした。

「外に一体なにが?」という“外”への恐怖だけでも大変なんですが、
段々と“中”、「スーパー内での人間関係」がザワついてゆきます。
壮絶な人間模様が展開される中、ひときわ輝くのが

宗教ババア!マーシャ・ゲイ・ハーデン
熱心な宗教信者で、緊急事態において「これは神の罰...」と呟きまくり、周囲にウザがられます。
宗教熱が高ぶりすぎて、会話が「神」「罰」「贄」だけで成立する感じ。「ピッカー☆」「ピカ?」「ピカピ〜〜…」しか発さないピカチュウと、同じ語彙力!! (アニメ版『ポケットモンスター』参照)
この宗教ババア、キャラが濃すぎるんですが、中盤で虫と会話してました・・・。しかも通じてた・・・。 “信仰の力”と言うより、「おばさん特有の“強引力”」に感銘。

この映画、「映画では脇役の人たち」を主役に据え、描いた作品と言われています。
普段の映画では「殺人鬼がいる部屋で寝られるか!俺は自室に戻るぞ!」と言って姿を消すような人々にもそれぞれ苦悩、喜び、人生があるのだと思い知らされ、感慨深い…。

序盤に、「子供たちが家にいるからスーパーから出る!誰もついてきてくれないの!?」と叫んで、その身一つでスーパーの“外”に出て行った女性がいるのですが。
普通の映画なら、この主婦が主役ですよね〜〜。
ジョディ・フォスターとかで。
「正義感の強い女」・ジョディで!!!

←正義感に定評のある女 ←最新作『おとなのけんか』では正義感が強すぎた女・・・。

【※ネタバレ感想】
衝撃のラストが話題を持ってく映画ですが。映画全編を通して描かれている「人間模様」が凄いと思います。一緒に笑い合ってた仲のご近所さんが、極限の状態に晒されて殺人リンチしちゃったり。何が怖いって、映画を見ながら「人々が変わりゆく様」「集団心理」にゾっとしていた観客が、宗教ババアが打ちのめされるシーンでスカッとすることですよね。(軍人を生贄にした時の宗教一派は、やられる宗教ババアを見てニヤッとした我々と同じ爽快感を抱いていたのでしょう)
ラストもやっぱり凄くて、日本人の好きな「あきらめたらそこで試合終了ですよ」という言葉を、残虐に押し付けてくる映画に仕上がっています。パニックムービーとしてもずっとハラハラ面白く見れるし、「人間」が描かれているので、好き。

テレビ東京 CINEMA STREET 午後のロードショーにて鑑賞)