大人は判ってくれない★★★〜映画少年の行き着く先は〜


  ーー「わがフランソワ君、君の映画は傑作である。奇跡のようなものだ。親愛のキスを送る」(ジャン・コクトーの賛辞)
家庭内が荒れていて、学校ではいつも怒られている映画少年が家出するはなし。


タイトルから反抗期なわけですが。
「大人ってクズ!」と葛藤するピーターパン症候群の少年が、最後は「大人になるのも悪くない」と未来に希望を見る『サムサッカー』みたいなはなしかと思ってたら。
全然違うやん。
原題『400回の殴打』(LES QUATRE CENTS COUPS)ですからね。
400回の殴打に筆頭する仕打ちを受ける主人公(ジャン=ピエール・レオ)。
一番笑えないのは彼の両親…。レベルで表すと日本にいたら子供を迷わず「戸塚ヨットスクール」に入れそうなレベル。


主人公の愉しみは映画だけなんですが、ある日バルザックに心酔します。
バルザックの写真を壁に貼る主人公。
好みの作家に出会えたことは喜ばしいですが、
岡田真澄似のおっさんの写真を飾るのはどうなんだろう…。

岡田真澄似のおっさんからまさかの悲劇が生まれます。
なんと、バルザックに影響を受けて書いた作文が、教師に盗作と捉えられ、主人公は停学処分に遭うのです。Wikipedia丸写しのレポートを提出する大学生に見てもらいたいですね!


「文学みたいな映画だな」と思ったんですが。
監督のトリュフォーは、自分の人生を主人公の俳優(ジャン=ピエール=レオ)に演じさせ続けたらしい。
自伝ということならば、「文学的」って印象にも納得がいきます。
しかし、「現実を忘れられる時は映画館で映画を見てる時だけ」って気持ちはわかるなあ。
暗闇の密室で大音量で大画面を見るから、五感総てがフィクションの世界にトベるから。

【※ネタバレ感想】
 逃げるに逃げて、海に行き着くラストは(もはやこれ以上逃げられない為)カメラの方向を見据える主人公のカットで終わる。現実と向き合う決心をしたことが表されてるらしいです。大人は主人公のことを判ってくれなかったかもしれないけど、彼は自分のことがわかった。きっと、彼はあのあと、映画をつくるのでしょう。

WOWOWにて鑑賞)