クレイジーハニー★★★★★〜見たくないものを、見せてあげる〜


  ーーどこまで、こんな私を受け止めてくれますか?(劇中セリフより)
スキャンダラスを売りにしている女流作家が熱心なファンとぶつかり合うはなし。本谷有希子の舞台。


長澤まさみ「ゲイしか友達がいない女」というメチャメチャリアルな役を熱演。
さすが「若手女優界・真のビッチ」ことまさみ。個人的に、若手女優の中では沢尻エリカと並んで突出している役者。エリカとまさみは月と太陽…。コインの表と裏…。(?)

今回まさみが演じるのは、「デビュー作のケータイ小説は売れたものの、その後鳴かず飛ばずで、相棒(リリー・フランキー)と共にスキャンダラスな人生を芸にしている作家・結城ひろみ」。
勿論編集者には陰でバカにされているし、ギャンブルにも手を出し、出会って一ヶ月の外人と言葉も通じないのに結婚して離婚するというどこかで見たことがある経歴。やりすぎです。


人生どん詰まり状態のまさみは、あることを企てます。
その名も「ファンよ、私を殺せ」。落ちぶれた自分と熱心なファンとで「ガチ」な討論をし、それを書籍にするという算段。(またどこかで見たことがある言葉が・・・)
これがまさみ・ファン両とも凄いのですが。
画像見た方が早いんで載せます。


「そんなに私のこと好きなら靴舐められんの?」とファンを脅す、まさみ・・・。
ほかにも「そんなに憧れてるなら金くれるの?親は?サラ金は?」
「生きる希望を貰いました!とか純粋な言葉もらうたびに心がスレていく。」
「人が人と繋がりたいなんて暴力。アンタたちは怪物。」
暴言連発。

ファンの方も酷い。「応援してます!」「力になりたいです!」とか調子のいいこと言っておいて、いざまさみと対面すると「裏切られました!!」と激怒。勝手な幻想を押し付つけてただけなのにね。
まさみには超共感してしまいましたが、ファンたちにはイライラしっぱなし。
ただし「これだけ力になったんだから胸揉ませて!!」と言い出したファンだけは愛せました。

まぁ、ファンとアイドルとか色々大変でしょうけど。
「このファンどもとまさみは絶対友達になれない」とひと目でわかるところが凄いと思いました。


おそらく多くの観客は「見たくないもの」「理解できない」と反応してそうですが。これこそが我々群衆が求めている真の姿。人の破滅。そして、その先にある生きる人間の姿です。
映画版『ヘルタースケルター』みたいに、キャッチーに飾られた「破滅」ならみんな貪りつくけど、ここまで「貴方たちは破滅を求めている」と訴えかけてくる話は引かれてしまうのでしょう。だけど、この『クレイジーハニー』は、人間の一つの真実だ。
本作に存在するのは、主人公「結城ひろみ」だけではない。清純派から堕ちた沢尻エリカ、キャラクタの反面スキャンダルを続ける広末涼子、言葉の通じない外国人と結婚し離婚した浜崎あゆみ、無理のある「ガチ」を掲げるAKB48、『セカチュー』で清純派ヒロインとなった長澤まさみ本人。そして、私達がきっと、息を潜めているのでしょう。破滅を商品にする芸能人も、目を輝かしてその生贄を見るファンも、みんながみんな「クレイジーハニー」。

そういえば。
本作の長澤まさみ、「遂に素晴らしき女優になった」と感銘を受けたのですが。
インタビュー見たら、当の長澤まさみがあまり作品の意図を掴んでなかったぽかった・・・。あの人間を剥き出しにした演技を、脳はなく天然でやっていたとは・・・。
やはりまさみ、天才か・・・。
←パンツ見えそうなまさみ
【※ネタバレ感想】
とてつもないハッピーエンドだと思いました。それも最上の。
世間からどう言われようと、2人は笑っていたんだ。2人だけのハッピー・エンド。

WOWOWにて鑑賞)