最終目的地★★★★★〜昼ドラ文学映画〜


  ーーあきらめた愛、忘れてしまった愛、だけどここで最後の愛を見つける

何故、昼ドラには「田舎の金持ち」が多いのか。
それは「田舎=閉ざされた社会」だから。「田舎の金持ちだとご近所さんと付き合う必要性が無い」から。(農民は隣人同士の助け合いがどうしても必要)
よって「田舎の金持ち」は「超閉鎖空間の中での愛憎劇」が可能な環境なのである・・・。
「田舎の金持ち」イコール「昼ドラ」!!!!(ドン!)

本作では、「死んだ作家の伝記書きたい!お願いしたら断られた!なら直接頼みに行くべw」ってノリの主人公が、作家の遺族を訪ねます。
南米のその家では・・・作家の本妻、作家の愛人、愛人の娘、作家の弟、弟の彼氏が待ち受けていたのだった・・・ (昼ドラ キターーーー)

昼ドラ一家を紹介しますよ。

伝記作家の主人公(オマー・ラザギ)と戯れる作家の愛人(シャルロット・ゲンズブール)。
いや〜〜この愛人が凄い。
主人公を見た瞬間「抱いて!!抱いてェーーー!!!!」オーラ噴出。

愛人、厳格な本妻に「抱いてオーラが凄いんだけど?てかあのイケメン、彼女いるから。」って嫌味言われてた・・・。
この本妻(ローラ・リニー)の昼ドラ感もすごかった・・・。趣味は絵画。「どうせ才能は無いの」と田舎の豪邸に引きこもって絵描いてるのさ!!

そして作家の弟(アンソニー・ホプキンス)とそのパートナー(真田広之)。
レクター博士真田広之がゲイカップルという時点でオチついてますが。
このおじいさんは、「作家の伝記を書きたい」と言う主人公に最初から好意的なんですよ。
主人公にとって、唯一の味方。ついでにこの主人公、「若く筋肉質なイケメン」って設定。
じいさん(パートナーは若い男)に食事に誘われる主人公・・・。・・・ッ逃げてッ・・・!!!
弟に誘われる主人公に対し、「いや〜僕らの付き合いは長いからね」と聞いてもない恋バナを始める広之・・・。めっちゃ「ゲイのつばめ」役、似合ってた。

そんな「昼ドラ愛憎一家」に迷い込んでしまった主人公ですが・・・

中盤、主人公の彼女が参戦。
この女も曲者ですからね。
「犬預かったけど旅行行かない?犬は保健所に置いていきゃいいでしょ。30日以内に引き取れば殺されないわよ。」と発言し映画開始5分で全ての犬好きを敵に回した女。

そんな「凄まじき昼ドラ映画」はどうなってしまうのか・・・!?
続きは劇場で!!!

眺めのいい部屋』『日の名残り』のジェームズ・アイヴォリー監督作で、映画自体はとても濃厚な芸術的・文学的なんですが。
「名画」なのに見てて全く疲れない!「昼ドラ力」によって!!
「昼ドラ」って愛憎ですが。愛に駆られて憎しみや焦燥、そして諦めを抱くって心は、人間の根源的な部分だと思います。だから「昼ドラ」は「文学」なのだ。
84歳でこんな文学昼ドラ作っちゃうなんて、アイヴォリーって最高に楽しい人ね! ←昼ドラ風

【ネタバレ感想】
本妻のローラ・リニーが素晴らしい。彼女が原稿を燃やしたあの瞬間、作家の「作品」は完成したのでしょう。
タイトルは『最終目的地』(原題:THE CITY OF YOUR FINAL DESTINATION)ですが。確かに、それぞれが「人生の最終目的地」を見つけました。でもそれって「at〜」を発見しただけなんですよね。「at〜」って文の最後につくじゃないですか。動詞は、その前に位置する。「最終目的地(at)」で「何をするか、どうするか(do)」はまだまだ未知。
本妻なんか「最終目的地は夫の家ではなかった」ってだけで、未来はまだまだわからない。でも彼女は、「夫」に縛られた時と違って、笑みを携えていた。とてもポジティブなラスト。
(シネマート新宿にて鑑賞)