ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン★★★★★〜金と友無きSATC〜


  ーークセありすぎ!のブライズメイドが大集合!結婚式は脇役でも、自分の人生では…主役!

SEX AND THE CITY』は何故売れたのか?
女性たちの心を掴んだからである。男に依存せず「自由」に恋愛する『SATC』の女たち。星の数ほどの女性たちが彼女たちの恋愛観・悩みに共感しただろう。
そんな『SATC』の女たちの「自由」はどこから来てるのか?それは「金」である。彼女たちはNYのキャリアだから、夫に養われなくても生きてゆける/男を選べる「自由」があった。キャリーはVogueに掲載される人気作家だし、サマンサは広告代理店の社長、ミランダはハーバード大卒の弁護士、シャーロットは美術ディーラーのお嬢様。
 ・・・『SATC』に熱中した女たちに、一体どれだけ「自由を持てるほどの金」を持つキャリアがいただろうか?


本作『ブライズメイズ』は「金と友無きSEX AND THE CITY」である。
主人公・アニーは、起業したケーキ屋が潰れ、母のコネクションでアクセサリー店員をやっている。今月の家賃すら危ないし、男はセックスフレンドしかいない。休日の過ごし方は「公園で開催されているエクササイズ教室を盗み見して木陰でタダで美容体操」・・・という実質盗難。要するに貧乏!
ある日、一緒に盗難を働いていた親友が結婚。動転するも必死に平静を取り繕い「お、、、おめ、おめでと〜〜〜」と目を泳がせるアニー…。
親友の結婚式の企画運営をすることになりました。その運営に、花嫁と親しい6人が集結する。彼女たちが「ブライズメイズ」。


衝撃なのは「ブライズメイドたち仲良くない」ってことだよね…。
そもそも共通点は「花嫁と近しい」だけだし、全員が「友達少なそう」な感じだから、むしろ仲が悪い。
メンバー紹介。
「スピリチュアルでぶ」!「絨毯が息子のザーメンにより干からびてる家の主婦」!「友達は1人もいないセレブ妻!」「ガキンチョに雑巾みたいな顔と言われる失業女」!「やっと幸せになれた(多分)花嫁」!「悪い人じゃないけど面白いことは一言も言えないゆるふわ主婦」!!!
「始まる前から割と終わっている人たち」の映画なのである。


どんどん落ちてゆくブライズメイズたち・・・。
しかも「社会が悪い」ということでもなく、本人の人格にだいぶ問題あり・・・。
この映画は「『SEX AND THE CITY』より売れた!」ことが喧伝されてるんですが、それは当然だと思う。こんなお下劣映画がアカデミー賞にノミネートされたのも、当たり前。何故なら『SEX AND THE CITY』よりもリアルな人間を描いているから。この世の中のほとんどの女性にはキャリー・ブラッドショウのように名誉も金も無い。『ブライズメイズ』の主人公アニーは仕事すら無いし、恋もできないし、友達も失くした。
ブライズメイズ』は最低の映画だ。度が過ぎるシモネタ描写だけでなく、主人公の言動も下の下。でも、「最低」だから、泣けるのだ。「最低」だからこそ「最高」なのだ。劇中に「落ちる所まで落ちれば上がるだけ」って台詞があるけど、主人公を更にどんどん落ちてゆく。この世界に「ここまで落ちれば大丈夫」なんて境界はきっと存在しない。でも、その穴底からしか見えない美しい景色は、きっとあるのでしょう。
そう信じさせてくれる映画。

(京橋テアトル試写室にて鑑賞)
提供;http://coco.to/special/16570