ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日★★★★★〜獣と向き合って僕たちは大人になる〜


動物園と水族館とプラネタリウムが一斉に体験できるお得映画でありますが。
これは劇場&3Dで見なきゃ駄目だな。映像体験と精神体験あわせ、啓示を受けたような感動があった。

まず、動物園の動物が乗った船が沈むんだけどさ。
「動物を沢山乗せた船」と言えばノアの方舟ですけど。
なんと今回、沈没した船は日本製。
ノアの方舟日本製かよ!

船には動物園で飼育していた動物たちが乗っていたわけだから、パイ君のボートには複数の動物たちが飛び乗ります。
漂流メンツはこちら↓

(本当にこの画像しか無かった)虎・シマウマ・ハイエナ・オラウータン
中でもオラウータンは熟練俳優のような芝居であった。
オスカー像3個は家に飾ってそうな貫禄だったんですけど…


虎は猛獣なので、パイ君はお手製イカダに乗り、虎がボートを占領する感じでしたが・・・。
フンはどうしてたんだ?
ボートが虎のフンまみれになってないか心配・・・。
久々の「トイレの心配」映画であった。
よく波に揉まれていたので、自動洗浄機能つきボートだったんだけどさ。

【※ネタバレ感想】
 誰もが「善」として生きたい、と思っている。又は、思っていた。でも、世の中には時に「悪」的行為に出なければ生きていけない時がある。「生き続ける」という根源的使命を全うする為には、時に、他人を損なう【獣的】行動をとらなければいけない。ならば【己の獣性と、どうやって折り合いをつければいいのか】?これがこの映画のキモだと思う。
 【虎と出逢い、接し、向き合い方のスキルを紡ぐ】流れはそのまま【自らの獣性と出会い、接っし、向き合い方のスキルを紡ぐ】パイ君の心理的成長・自己受容を描いている。そもそも、船の中の動物たちは檻の中に入ってるわけでしょ。施錠してあるんだから出れる訳が無い。虎がハイエナを噛み殺すシーンも不可解で、あんな潜ってるのか?そもそも何故ボートは糞で汚れていないのか。よってあの虎は主人公の精神の象徴。
[参照;『ライフ・オブ・パイ』の人食い島が意味するもの(映画を観た後でお読みください) - Togetter]
 虎は獣のままに殺しを行う。ただ、他のものが生け捕った死骸を貪るハイエナより良い存在として描かれている。虎の行いは全てにおいて「必要だった」もので、ある種の「必要悪」だ。「必要悪」である【獣性】は、敬虔な若者・パイ君にとっては「汚い部分」。その汚さを自分なりに消化し、汚い部分を自覚しながらも折り合いをつけて生きてゆくことが「大人になる」ってことかもしれない。
 「盲信(自らを滅ぼすもの)」の象徴である人食い島からパイ君は去った。その際に虎が着いてきたところがポイントだ。「虎がいなければ生き残れなかった」というセリフがあるように、盲信と違って獣性は人生に必要なもの。人は【己の獣性】と友にはなってはいけないが、相棒でなければならない。まるで啓示を受けたような感銘を受けた。

(TOHOシネマズ六本木ヒルズにて鑑賞)