塀の中のジュリアス・シーザー★★★★★〜ヤクザたちの学芸会〜

刑務所の囚人がシェイクスピア劇をやるドキュメンタリー。
囚人たちの罪状は麻薬売買/マフィア/強盗/麻薬売買/麻薬売買/麻薬売買・・・つまり大体ヤクザ。
リアルヤクザの学芸会を見られるだけでも贅沢な作品。


演目は『ジュリアス・シーザー』。
「腹心のブルータスが皇帝シーザーを暗殺する」っていう…。まぁ大体「織田信長明智光秀」だよね?
シーザーのおっさんの演技が最高だったよ〜。
ブルータス役の人は服役後役者になったプロらしい。聖書のユダのように葛藤する微細な芝居が美的!「シーザーのことは嫌いになっても、ローマのことは嫌いにならないでください!!!!」って印象に残るスピーチをしていた。


陰謀が渦巻くローマ帝国を演じてくうちに、役者である囚人たちも影響され、
囚人同士でインネンのつけ合いが始まり塀の中の『アウトレイジ』化
モノクロとカラーを使い分けたりしていて、これぞ映画表現!的な傑作。
結局「芸術」とは嘘だけど、時に真実を炙り出すね。
囚人たちはローマ帝国の陰謀を擬似体験するに連れて「犯した罪の大きさ」や「失った家族」のことを思い出すけど、そもそもオーディションから「家族を捨てる」劇をやらされていた。そこから「囚人たちの心を揺さぶり重みある劇に仕立て上げる」演出家の思惑が見えて、彼こそ偉大なる嘘つきであると感心する。

(銀座テアトルシネマにて鑑賞)