アイアンマン3★★★☆〜アメリカ版skyfall〜


リア充がキモオタに手を差し伸べてあげるが、女とイチャついてるうちにオタクとの約束を忘れ反故にし、オタクを寒空の中数時間待ちぼうけにするところから悲劇は始まる。 ←本当


シリーズはヒーロー個人の葛藤を描くアイデンティティ戦争にshiftチェンジ。トニー・スタークは前回の『アベンジャーズ』事件がトラウマになっており、不眠症が続いているよう。まるで3.11後遺症のように「ニューヨーク」という単語に怯える日々…。『アベンジャーズ』での合戦が、彼に心の傷を植えつけたのだ…。でも『アベンジャーズ』じゃ一番尺とってなかったっけ?
むしろ反省すべきはクソほどの役にも立たなかった弓打ちである。スカヨハはお色気担当一般職なのでチームに多大なる貢献をしたので免除。

主人公の苦悩とともに、今のアメリカの状況もうつされてる感じ。
市民の登場は少ないとは言えこんなシーンもあったし〜↓

(TVアニメ『うたのプリンスさまっ』より)
こう書くと「アホなアメリカ映画が社会派(笑)要素入れちゃったか〜」という印象を持たれそうですけど、アメリカ版『スカイフォール』と言っていいレベルのガチ。
ジャビット君みたいな名前の愛機も大変だったしさ…。


【ネタバレ感想】
 アメリカの3.11後遺症、テロリズムへの恐怖、戦争への疲弊、イラク帰還兵の心傷、ビン・ラディン襲撃、武器量産、中国脅威論、道化師芝居としての独裁者像、海外生産移行、ぬくぬく生き残るブッシュ、民間機ジャック、乗っ取られた星条旗。そして、いまやヒーローが来ようと、市民同士で助けあわなければ生き残れない現代社会。アメリカの社会問題っぽい要素が盛りだくさん。本作での『アベンジャーズ』は3.11だし、ベン・キングズレー演じる道化役者は「殺しても戦いは終わらないアイコン・ビンラディン」と「アメリカの中国への脅威」を反映している。
 しかもこれ、夢オチ・・・・?
 参照→佐藤秀の徒然幻視録:アイアンマン3〜戦争疲れのアメリカ
 夢オチだとしたら、なんだか物凄い闇を感じる作品である。単にトニー・スタークというキャラを通じ、現代アメリカの不安や吐露を延々と聞かされるのだ。そりゃハルクも寝るわ!
 『スカイフォール』はジェームズ・ボンドの物語でありながら、英国及び国民のアイデンティティを提示する映画であった。「国際勢力図がケイオスに陥り、大英帝国としてのイギリスが崩れ去ろうと、英国女王に仕えよう」と言ってくるような。『アインマン3』も又、『スカイフォール』のように国家の現代性、問題点、恐怖心を綴る。しかし、確固たるアンサーは出ない。一応「大事なのは武器ではなく自身のアイデンティティである」といったメッセージは出るが、戦う使命を背負ったはずのヒーローはスーツを破壊してしまうし、壮絶なバトルすら「心を病んだ患者のつぶやき」のように扱われている。
 単純に2作品を比べて見ると、ジェームズ・ボンドよりもトニー・スタークの方が重症に思える。ジェームズ・ボンド(英国)は老い、全盛の力(大英帝国時代)を取り戻せずとも、女王という「上の存在」がおり、アイデンティティをなんとか保つ。しかしトニー・スターク(米国)には英国王室のような「上の存在」がいない。いてもそれは政治家、ひいては大統領であるが、そのヒーロー像もブッシュ政権によって崩壊した。又、トニー・スタークは自由を保証されたアメリカ市民である。社会的地位も大企業の社長。ペッパーと言う大切な恋人はいるが、結んでいる関係性は「対等」で、身分を護ってくれるような「上の存在」ではない。女王や天皇のような、頼れる「上の存在」がいないので、アメリカは今まで自由主義によって「一市民」がヒーローとなってきた。そのヒーローも、いつしか疲れてしまった。『アイアンマン3』はそんな映画に思えた。どうトニー・スターク、アイアンマンは「戦うヒーロー」として復活するのか?『アベンジャーズ2』に期待がかかる。
(TOHOシネマズ六本木ヒルズ