SHAME -シェイム-★★★★〜神話的賢者モード〜


セックス依存症を描き、過激シーン満載でも話題となった作品。
確かにそういうシーンが多いけど、どれもエロくないのが特徴。なんせ主人公は依存症で、病気だからね。気持ち良さなんて求めていない、むしろ苦痛そうな性交が続く…。まるで万年賢者モードな映画である。
しかもこれ、観客が「セックス依存症」と捉えなかったらただのどすけべ野郎ムービー笑。


普段はキチッとしたエリートリーマンだが、依存症なので職場でもエロサイトを漁る主人公。
もちろん職場にバレるわけだけど、軽やかにかわす主人公。その罪をインターンに押し付けた!!
その軽やかさ、見習いたいデスね!!


しかし神話的な話だ。
主人公がまず、彫刻のような顔つき。彼の生活に変調をきたすのが、恋人に捨てられいきなり居候してきた彼の妹。機械的にセックスをし「その場限り」の関係を毎夜続けながらもキッチリとしたスーツを着る兄と異なり、彼女は常に人との繋がりを求めており、ルックスも一言で表すとメンヘラ。血が繋がっているのに外面は全くの正反対。しかし、根底では共通して傷を持っている。ヴィスコンティの『熊座の淡き星影』を思い出した。というか、ヴィスコンティが生きていたら、きっとファスベンダーを撮っていたと思う。

【ネタバレ感想】
 「私たちは悪い人間じゃない、悪い場所にいただけ」という言葉。彼ら兄妹はコミュニケーション(特に性的なもの)に著しく問題を来たしている。その原因は明かされないが、その台詞から根にあるのは家庭環境だと嗅ぎ取れる。「親に性的虐待をされていた」「兄妹間で近親相姦的感情をどちらか/お互いが抱いていた」…あたりが模範回答?
 自殺を計ったキャリー・マリガンマイケル・ファスベンダーが発見するシーンは、まるで天上の如く美しい。そして彼は涙を流すわけだけど、結局病(依存症)は治らず、またいつも通りの日常を繰り返すことがラストで示唆される。なんて哀しく、現代的で、現実的な話だろう。なのに画面だけはただただこの世のものとは思えないほど美しい。「神話の神々は近親相姦をするが、それは神にしか許されない行為であって、だからこそ我々人間は家族と交わってはいけない」というあるドラマの言葉を思い出した。本作の兄弟が近親相姦的感情を抱いているのだとしたら「「人間だから」」彼らはあんなにも苦しんでいるのだろうか?主人公が苦痛にもがく姿は、端から見ると、恐ろしく神物的美しさを誇っていたから皮肉だ。またまた、鏡が登場する為「どの性交も主人公の妄想だ」と感じられる節もある。色々と皮肉な映画。

WOWOWにて鑑賞)