汚れた心★★★★〜「勝ち組」「負け組」の由来〜


「勝ち組」「負け組」の語源となった史実の映画化。
・・・と書くのが一番キャッチーかな。第二次大戦集結時、日本と国交を廃していたベトナムでの日本系移民が「日本国敗北」を信じず、敗戦を主張する日本系を虐殺する暴徒集団となった事件が「勝ち組」「負け組」の由来らしい。道理で嫌な語感だ。このベトナムでの日本問題はかくも30年続いたと言う…。 参照→第6章 日系社会の分裂対立(1) | ブラジル移民の100年


 今じゃすっかりネタ用語扱いの「国賊」・「非国民」。今からじゃコントになるようなその言葉を、本気で、人を殺すまで本気で用いていた人々の話。
 カメラマンを営む善良なベトナム日本移民であったのに、段々と「日本勝ち組主義」へと傾向してゆく主人公はお好み焼き屋」こと伊原剛志 ←好きな作品に出たいが為にお好み焼きチェーンを始め事業に成功したらしい。 (参照;【伊原剛志】年商10億円のお好み焼きチェーン経営!これも役者のため - ぴいぷる - ZAKZAK 彼は本作で日本人初のプンタデルエステ国際映画祭で、日本人初の主演男優賞を受賞。
 その妻役に常盤貴子思えばまた幸薄な女役・・・・笑。

〜最近の常盤貴子さん〜
『とんび』→破天荒な夫と貧乏生活の末、息子を庇って死亡
『CUT』→ヤクザが集まる店の店員
『ゆりちかへ ママからの伝言』→妊娠と同時に癌発覚、夫はニート
本作→夫が暴徒化し殺人犯に
 いつしか不幸専攻女優になっていたらしい。日本最強イケメンのキムタクで運を使い果たしたのか…。まぁあの時も死んでたけど…。

 現代にも通ずる「日本人の全体主義傾向」問題も感じられる作品。主人公たち過激派は日本が敗戦したと考える人間(「負け組」)を「汚い心の持ち主」と罵るんだけど、一意見を感情的に「汚い」とし糾弾する危うさは今も存在すると思う。下記は『映画のブログ』ナドレックさんの素晴らしいレビュー。
 参照→『汚れた心』 心は清くなければならないか? :映画のブログ
 又、映画上では男と女で「敗戦」への態度がわかれているところが面白い。女たちは全員過激派にはならず、むしろ男たちの「血で血を洗う民族内虐殺」をやめてほしいと願っている。「日本は敗けた」と考える男性はいるものの「勝ち組」派から激しく叱咤される。「勝ち組」信仰で暴徒化している男たちも、どこか「真実に気づきながら知らぬふりをしている」畏怖が見受けられる。ナショナリズムを糧に生きてきたから、それを認めたくない「弱さ」。それゆえに同じ日本人を殺害する矛盾に出てしまう…。
 登場人物の背景は観客の想像に託すかたちであるし、〆方が結構ダサいんだけど笑、日本人キャストでここまでの普遍的提議を持つ歴史映画を作れたということに感動すら覚える。

WOWOWにて鑑賞)