ぼくのエリ 200歳の少女★★★☆〜萩尾望都系『トワイライト』〜


イジめられっ子の少年が、団地で出逢い恋した少女はヴァンパイアだった・・・。
ていう要するに『トワイライト』なラブストーリーだよね?
あの留まることを知らなかった純度100%バカップルムービーと違い、こちらはお耽美なスウェーデン映画…。凍てつく雪はとても美しいけど、それと同時に厳しさを携えていた。作品自体が持つものもとても重い。「君たち、せめて『トワイライト』の10%でもいいからバカになって!!!」と叫びたくなるほどに…。


お耽美少年なので萩尾望都っぽいんだよね。
主人公が受けるイジメのシーンは残酷なんだけど、キャラも景色もお耽美すぎて段々ショタBLに見えてくる。
邦題によると、小学生の主人公と親密になるエリは200歳らしい。色々苦悩してたけど、200歳が小学生男児に手出してると考えるとロリコンだよね。
あ、日本版だとモザイクが被せられるシーンがあるんですが、とても重要なことが隠されているので、見終わったあとにググりましょう。


非常に美しく、また凍てつくような重さの映画で、文芸作品っぽいのですが。
ジャンル通りホラーだと思った。
クロユリ団地』は本作をベースにしたらしいんだけど、結末は違っているようで似通ってると思う。

【ネタバレ感想】(『クロユリ団地』結末も含)
 「団地」にとらわれた主人公が、その団地で出会った「霊的存在」と共に生きることを選択する…って筋書きが『クロユリ団地』と同じ。『クロユリ』の方はわかりやすいバッドエンドだけれど、実はこちらも絶望的。
 エリは同居していた男を女王様的に扱い「食事」の為に殺人を犯させていた。SMじみた共依存関係を結んでいたのである。エリ至上主義の男は自らの顔を焼きエリに命を捧げ自殺する。 実は、エリは「第二の男」を探していたのではないだろうか? その標的がオスカーだった。エリはオスカーに「猟奇的センス」=「自分の食事の為に殺人を犯せる才能」を見出し、彼にイジメっこへの復讐を持ちかける。団地から脱出し列車に乗るラストシーンは明るく見えるが、オスカーを待ち受けるのは「自ら顔を焼き自殺した中年男」なのかもしれない。そんな可能性が十分すぎるほどあるから、れっきとしたホラーに仕上がっている。
 かと言ってエリが残虐非道なわけではない。あくまでも、エリは「生きる為」に人間のパートナーを持っているのではないか。我々が「生きる為」に鳥や牛を殺すのと同じだ。そう考えると、ヴァンパイアの中で厳格な戒律があり「動物の血でも生きながらえる」設定であった『トワイライト』はだいぶラッキー環境。笑。

(DVDにて鑑賞)