11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち★★★☆〜わらのたて〜


三島由紀夫自決事件の映画化。
彼の割腹自決と言えば「決行前夜に右腕の青年と一夜を共にした」という下衆ゴシップのイメージなんですが、本作はそういう恋愛系ではないです。


 これほど「着地点」がわからない映画は久々!そこが好き。
 まずARATA演じる三島由紀夫を、どのような視点で見てるからわからない。三島は「国を真に想った美しき思想者」なのか?それともただの「道化」なのか?映画、ひいては若松孝二監督がどちらの視点なのか全然わからない。ARATAが間抜けに見えるシーンが続いて後者っぽいな〜と思ったら、桜吹雪とか挿入されちゃって前者っぽくなったり。筆を投げ自衛隊に入って「一人の新入りとして扱ってください」と男気を見せたと思ったら、次のシーンでは自衛隊のお偉いさんに料亭接待する「よくわからなさ」。。第一、割腹自決にしたって、自身が結成した思想団体(「楯の会」)の狂信的学生に流されてやってしまったようにも見える。まぁ今も三島由紀夫の思想・最後って神聖化はされていないし、結局「よくわからない人」だったのかも知れない。自衛官を人質にとったあと三島は「人生最後の演説」をするわけだけど、そのシーンが凄い。「演説なんぞ誰も聞いてません」って扱い。多くの大学教授にとってはトラウマになるシーンであった。


 『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』という題の通り、三島由紀夫と若者の話。正に「楯の会」の映画。三島の狂信者を演じた満島真之介の怪演は流石。ダジャレではないけれど「楯の会」を見ながら映画『藁の楯』を思い出した。本作の三島さんは「楯だと思っていたものが藁で出来ていた」…と絶望する瞬間は無かったようなので、幸せだったのかも。

【ネタバレ感想】
 「政治的思想はともかく、彼の遺した小説は素晴らしかった」という結論、だと勝手に介錯。完全に同意だ。

WOWOWにて鑑賞)