晴れ、ときどきリリー★★★☆〜リリーは生きている〜


 「母が亡くなった為、童心のまま育った妹と二人暮らしを始めたシッカリ者の姉。奔放な妹の態度に、まず姉の彼氏がキレて…」というTHE・よく見る話。 だけれど、恐らく知的障碍を持つリリーを「同情すべき存在」として描かない点がフランスらしい。むしろ性格が良いか悪いかだったら悪め。だからこそラストで感銘を受けるのだ。


 妹役が『スイミング・プール』のリュディヴィーヌ・サニエで、姉役がダイアン・クルーガーなんだけど…。姉妹なのに顔ちがくない?まぁ妹はキメ顔をしないかつ、スッピンなことを考えれば普通…?むしろダイアン・クルーガーもスッピンになればこんな感じなのだろうか。しかし「ダイアン・クルーガーが姉」って萌えアニメみたいなドリーミィ設定。美しいのはダイアン・クルーガーの顔造形ではなく画面全体!爽やかな自然の中ではえる、ガーリィな色彩が素晴らしい。話は鬱ホラー演出あり直接的セックスシーンありで結構キツめだったりしますが…鑑賞後は爽やかな感動を覚えます。今のところWOWOW限定オンエアー。


 知的障碍を持った人は「生きてるの楽そう」とよく言われるけれど、多くの方が「世間にそうやって蔑視される羞恥心」を抱えているらしい。「悩みが無くて楽しそう」なんて差別的かつ蔑視的な言葉は、イコール「見知らぬ他人から見下されいるということ」なわけだから、当然である。「障碍がわかりやすい人=自分たちと同じ人間ではない」と思い込んでいる人は未だ多い。「障碍を持っている人=同情すべき可哀想な存在」という価値観を持つ、巷に溢れかえる映画やドラマも、同じような差別心を孕んでいるのではないか。
 一方でこの映画はリリーを「憐れむべき存在」として描かない。確かに母親を亡くしたり可哀想な目には遭うが「ただ哀れな存在」とはさせていない。リリーにはちゃんと心があるのだ。人間だから長所も短所もある。非常に人間的な嫉妬も抱くし、時に嫌がらせもする。映画の視点は姉と妹どちらにも寄り添わず、きちんとした「姉妹」の映画となっている。やはり現代フランス映画は「家族」の名手。ただ、決してリリーの「ハンディキャップ」を描いていないわけではない。リリーの世界である森と家は一見ファンシーだ。しかし、リリーが姉に怒りを飛ばされた際に映る森には、なんともグロテスクな赤ん坊(人形)の足が映される。これもリリーの世界。「普通にしている」つもりなのに人々に「普通ではない、ふざけた態度」と捉えられる、彼女の葛藤・苦しみ・闇が表れているよう。あ、リリーのペット(友達?)である七面鳥がかわいいです。

WOWOWにて鑑賞)