さよなら、さよならハリウッド★★★☆〜ウディ・アレンに踊らされるハリウッド?〜


 「意味不明な高尚映画」しか撮らなくなったと批判されるハリウッドの大監督が、大衆向けの大作に挑む!しかしクランクイン前に突如失明。彼はバレずに映画を撮り終えることは出来るのか!? というウディ・アレン姫川亜弓になる話である。
(※説明しよう!今の『ガラスの仮面』で亜弓さんは失明し、そのことをバレずに紅天女役を演る為「盲目での舞台演技」特訓に励んでいるのだ…!暗闇のなか炎を灯しヘアピンを投げたりね!!!←本当)


 原題は"Hollywood Ending"。「さよなら」と作者が別れの挨拶を言ってるだけのように聞こえる邦題よりも辛辣。皮肉がいきすぎていたりと前半にマンネリ失敗感を漂わせながら、段々面白くしていき〆を成功させる腕は流石。ついで、ウディは運が良いのか「作品の続き」のような現象が現実の映画界で起こる。

【ネタバレ感想】
 "アメリカ国内ではチケットの販売額が500万ドルに満たないなど、興業的には不振であったが、国外での収益は1000万ドルに迫った。皮肉なことに劇中でヴァルが監督する作品も、国内で不振だったが海外では評価された、という設定である。"-Wikipediaより
 見事すぎて「公開後の批評/セールス状況でオチがつく仕組み」みたいになっている。結局、ウディ・アレンの皮肉芸に米批評家が踊らされたような結果に…。。今もアメリカの批評集計サイトRotten Tomatoes支持率47%、metacriticでは46scores。アメリカ人からしたら「アメリカの映画は数字ばかり気にして文化的にクソ」「フランス>アメリカ」と言われたように感じるのかな。"Hollywood Ending"だし。現に、この映画の主人公はアメリカを捨てるように渡仏してしまう。
 だけれど、本当にフランス映画界が褒められてるんだろうか?映画自体は「監督が映画の知識など無い中国人の言うままにカメラも見ずに撮ったもの」でしょ?アレンが意識したかは知らないけど「前衛性ばかりを支持し、そんな雰囲気だったら条件反射的に大絶賛する滑稽なフランス人弄り」にも見える。こう見ると皮肉塗れな作品…。。しかし一つだけ、登場しても馬鹿にされない映画国がある。イタリア。皮肉まみれの『さよなら、さよならハリウッド』の中でイタリア映画だけは無傷だ。「イタリア映画こそが最高」と言われているし「フェリーニのような天才」という賛美まで出てくる。実際、ウディ・アレンは『ギター弾きの恋』で作品まるごとフェリーニのオマージュをやっているし、イタリア映画が好きなんじゃないか。シニカルとばかり言われているけど、ウディアレンも好きなものは贔屓する人間である。

 ちなみに『さよなら、さよならハリウッド』でアメリカ失敗したウディが、華々しい北米興行をあげたのは『ミッドナイト・イン・パリ』。公開当時6館だったシアターは1,038館にまで増え、物価調整すると監督作最高セールス。実は『ミッドナイト〜』は『さよなら〜』の続きのような話である。ストーリー概要はこう…「ハリウッドで名声を得た主人公はアメリカを下等映画国と見下しており、パリに憧れている」…結末までバラすと「アメリカを下賤としフランスを高尚だと考えていた映画作家が面食らう話」。なんか『さよなら〜』主人公の未来っぽい。まぁ、フランスに面食らわせたと言うより旧時代主義を改めたって感じだけど。 そんな『ミッドナイト〜』はセールスと比例するようにアメリカ人ウケも良い。Rotten Tomatoes支持率93%、Metacritic81%。作品の出来はあれど、アメリカ人はナショナリズムに忠実!

日本テレビにて鑑賞)