アンストッパブル★★★★〜これ以上アメリカ映画に何を望む?〜
エヴァ弐号機並の無人列車が襲いかかる!!!
【アメリカ映画】にこれ以上何を望む!?
・・・というのは言い過ぎだけども、本作にはステレオタイプとしての【アメリカ映画】要素が完璧すぎるほどに組み込まれている。現場を知るベテランと社会&舐める若者のバディ(黒人と白人)、反抗期の娘に悩む父親、立ち上がる市民と無能で高圧的なエリート上司、サバサバ物を言うキャリアウーマン、キメる時はキメる変人、間抜けなデブ、事件性に群がり事件解決を邪魔するメディア、逃げ惑う悲劇の群衆、野次馬と化す現代的群衆、すれ違いのメロドラマ、そして人類を脅かす怪物化した人工物・・・。これらのドラマを、あくまで「事件だけを描く」かたちで見せてゆく。 「嫌な奴」はいても射るべきは「モノ言わぬ人工物」なのだ。その様は、まるで人が作りし「経済」が膨張したサブプライム・ローン及びリーマン・ショックのよう。
アクション映画の始まりはリュミエール兄弟の『列車の到着』から始まった…とk.onoderaさんの名記事にある。
参照→『アンストッパブル』は映画そのものでありアメリカそのものである | 小野寺系の映画批評
今見るとただのほがらかな映像じゃんかい!!!なわけだけど、当時の観客は本物と勘違いし劇場から逃げ出したと言う…。人間は今も昔も「人工物が襲ってくる映画」にエキサイティングするらしい。スピルバーグの『激突!』は大型トレーラーが襲ってくる映画だった(トレーラーの運転手は映されない)。『ガンダム』や『パシフィック・リム』等のロボットものも、パイロットは居るものの「襲ってくる人工物」と言える。
そんな映画の王道である「襲い来る人工物」アクションを、王道に撮った上で現代的にブラッシュアップしたのが『アンストッパブル』である。「脚本構成はザ!世界仰天ニュース1時間スペシャル」にも関わらず、トニー・スコットお得意のデジタル加工とスピード感で観客を退屈をさせない。以前トニー・スコットのことを「普通の映画を普通に面白く撮る監督」と言ったが、本作でそれが頂点に達している。アメリカ映画史に残る一本であろう。
(日本テレビにて鑑賞)