だれもがクジラを愛してる。★★★☆〜実は的確な邦題?〜


 誰もがクジラを愛しているわけではないんだけど、批判された邦題は「だからこそ」味があるんじゃないかなーと思った。


 アラスカで氷に閉じ込められたクジラ3頭を救おうとするお話ですが…。主人公はかの動物愛護団体「グリンピース」の一員。これがかなりトンチキな人で、完全にクレーマーキャラ。動物を愛するあまりアラスカの冷水に潜ってクジラと交流する。NHKの『大海原の決闘! クジラ対シャチ』を見た身としては「ドリュ−逃げて・・・・!!!殺される・・!!!」といらぬ危機感を覚えてしまった。動物大好きクレーマーを演じるのはドリュー・バリモアなんだけど、実際にいたら恐らく煩わしい存在なのに、そう感じさせないところが流石・ラブコメの女王。


 救出活動には「名声と利益、利権」目当ての油田会社や政治家、メディアも集結する。グリンピースがヒロインだからと言って、捕鯨運動を否定する作品にはなっていない。主人公も「トンチキなクレーマー良識人」って感じだし。チームで最も好意的に描かれるのはむしろ捕鯨文化を持つ現地の人々。捕鯨を誇りとする現地の人々は、氷に捕らわれクジラたちを殺そうとする。しかしながら「3匹のクジラ」がメディアの注目を浴びてしまったが為に「ここで我々が殺したらバッシングされる」と判断し、救出に協力する。

【ネタバレ感想】
 この美しい救助活動、動物と自然を愛する主人公以外の「目的」はなんら美しくない。政治家は当選の為だし、アナウンサーは出世を狙っているし、油田会社は名声により他の自然地域開発成功を目論んでいる。現地の人々もクジラを愛してると言えど、発端は「自分らが世間にバッシングされるから」。そんな魑魅魍魎な人間たちだけど、ラストの「クジラが助かるか助からないか」、その瞬間だけは皆が「クジラの生還」を願ったのではないか?ただその一時だけ「だれもがクジラを愛してた」瞬間だったのだ。なんだかんだ人間ってそういうものだと思う。目前のスペクタクルやエンターテイメントによって「性善説」を換気させられる…。。だから味のある邦題だと思うんだよね〜。考えすぎ?全く「美しくない」理由で集った人々が、最後の最後だけ皆で同じことを願う。その瞬間だけは「美しい」のだ。

WOWOWにて鑑賞)