Fruitvale Station★★★★★〜リアリズムを模した映画的映画〜


 傑作!ある大晦日アメリカで黒人青年が射殺された。発砲したのは警官。駅で喧嘩していた黒人青年を止めようとして撃った。逝去した黒人青年は麻薬バイヤーで、一度逮捕されており、その後もそのような取引を行っている。小さな娘が居たのも関わらず…。だけど、本当に「射殺される必要性」はあったのだろうか?被害者男性の「殺されるまでの24時間」を淡々と再現したサンダンス審査員&観客部門受賞作。


 …と書くと固そうだけど、映画的快感に満ちた作品になっている。『エレファント』的な「神の目」視点をとりながら、『クラッシュ(2004)』のように時にエモーショナルで、脚本も伏線回収型。んで最後は号泣。「彼女役のスッピン、前田敦子に似てる〜〜ギャハハ!!!」と笑ってる場合ではない感動具合。この彼女役のMelonie Diaz、かなりいいです。今後売れると思う。主演はMichael B. Jordan、好青年イケメンで、スタイルが良い。主人公の母親には、既に樹木希林ポジションになりつつあるオスカー女優Octavia Spencer。
 敷居が低くありながら、きちんと快感を与える映画的構成、そして最後は泣かせて問題提議もさせる。見るべき映画です。


【ネタバレ感想】
 「リアル志向を装った映画的映画」でした。結構事実に即してるんだろうけど、わずか24時間の間で「伏線と暗示」が非常に多い。主人公がスーパーで女性を助けるエピソード。単なる「主人公のいい奴さ」を表したのかと思いきや、なんと事件の証言者となる。又、主人公が助けた犬。まるでなにかの呪いを受けたかのように、半日後、主人公も警察によって犬死にすることとなる。死亡後の終盤では、思いっきりエモーショナルな感動を提示してくるが、観客が最も見たい…見たくない…要素だけは、ぶつ切りする。ラストシーンが秀逸。
 事件について。映画を見ると、警察は人種差別用語を連呼している。「誤解ゆえの悲劇」ではなく、立派とした「人種差別事件」だ。

(AMC Loews Village 7にて鑑賞)