はじまりのみち★★★〜母は子を何処に送り出したか〜


 アニメ作家の初・実写監督作。渋い作品かと思ったんだけど、演技(指導)は過剰で、ややアニメ的。旅路のカットは作画的で情緒が無い。これって、良いのは役者と木下作品only疑惑…。だけど芝居と木下映画だけで泣けるからアリやな!!!


 作中、最もフューチャーされる木下作品は『陸軍』。国によるプロパガンダ映画にも関わらず、息子を戦争に送る母親の悲劇を描いている。一方で『はじまりのみち』の木下(加瀬亮)は『陸軍』を作ったことにより国からクレームを作られ、次回作の企画が頓挫。映画界に絶望し、自ら松竹を辞めた。無職となった木下は、病身の母をリヤカーに乗せ、徒歩での疎開を決める。

【ネタバレ感想】
 んーとまぁ、実在映画監督の話なので、結局主人公は監督業に復帰するわけですが…。面白いのは、木下の母が『陸軍』の母親と同じく「息子を戦場に送った」こと。この場合の戦場とは映画界。国の表現規制にも敗けず、敗戦後の資金不足にも敗けず、映画界という戦場で作品を創り付けろ…そんな母の遺志。『陸軍』と異なってラストが感動的なのは、「戦場と市場の違い」だけではなく「木下が映画でしか幸せになれない」宿命にあったから、ということもあるのだと思う。母は最後まで子の幸せを理解し、願っていた。


ANA機内にて鑑賞)