地獄でなぜ悪い★★〜「僕の大好きなもの」発表会〜


 映画道とは地獄道。そもそも創作道はwhat the hell。スプラッタ映画が大好きな園子音は、子どもの頃から絵の具で血糊を作っていたと言う。そんな映画とスプラッタが大好きな監督による「僕の大好きなもの」発表会。TVドラマのような雰囲気で、スプラッタを知らない非映画ファンに「僕(監督)の大好きなもの」を見せている。血液と肉塊が飛びまくる合戦にしてもゆるいギャグ基調で、血に非慣れな観客も乗り切れるつくり。役者も一定数の客足を確保する顔ぶれ(所謂サブカル層に好かれるメンツ)。 グロテスクに不慣れな日本人にも、スプラッタアクションの良さを提示出来ている。だけど前半つまんなすぎで〜〜〜〜〜〜〜ッす☆☆☆☆


 誘導的な「感動音楽」をしきりに流し、説明的長台詞を連呼するこの作品。作中で批判している金儲けしか眼中に無い今の日本映画…恐らくはキー局邦画のひな形を踏襲している。皮肉なのだろうけど、メタ構造は成立していないので単なる「くだらないキー局邦画っぽい映画」になっている。それどころか、盛り場をきちんと用意したフジテレビ大作『BRAVE HEARTS 海猿』よりクオリティが低いと感じたな。。恐らく「僕の大好きなものを見せたい」「TV映画を批判したい」が『地獄でなぜ悪い』の意思…テーマ。これさ、どちらか1つに絞った方が良かったんじゃ?両方やろうとした結果、無駄が増え、散漫かつ退屈。3つのエピソードが【映画】という軸で重なりあってく構図/個性豊かな登場人物/意図的にコメディ化されたスプラッタ…外面だけ見たらタランティーノだけど、実際見ると「園子温三谷幸喜になってしまった」仕上がり。


 ただし、友近だけは素晴らしい。一人だけ忽然と輝いていた。ハリウッドの人間に評価されるのも当然だ。そこは流石「ハマり役を与え役者を跳躍させる園子音監督」。思えば、ベルリン国際映画祭で主演女優賞を勝ち取った寺島しのぶも、彼女の憑依芝居を賞賛していた。
 参照→ハリウッドが友近に注目「地獄でなぜ悪い」初日舞台挨拶 - お笑いナタリー

(池袋HUMAXシネマズにて鑑賞)