ルームメイト★★★〜アリアドネに捕われた人々〜


 ルームメイトがヤバい人だった系スリラー。こういうの流行ってますね。つい最近アメリカでNo.1興行を果たした『ザ・ルームメイト』(2011)とか。


 登場人物が揃ってストライプの服を着ている稀有な映画。ボーダー、ストライプ、一本線、リブ編み…。北川景子高良健吾だけでなく、保険屋や犬を遊ばせる子ども達すらストライプを着ている。これ、恐らくアリアドネの糸」の比喩。ARIADNEという文字は作中でも登場する。ある場所の名前なんだけど、そこでも白と黒の縞がグルグル回る電動看板がある(床屋さんの動く看板・三色ねじり棒の二色ver.)。アリアドネの糸は「迷宮において迷える者を導く糸」。『ルームメイト』でボーダー服を着ている人は「アリアドネのお導き」に捕らわれちゃってる状態となる。北川も高良も、ついでに保険屋も、ズルズルと「どこか」に連れて行かれる。向かう先が良いのか悪いのかはわからない。
 [参照;アリアドネー - Wikipedia]


 ファッションを見てもわかるように、細部の演出が緻密だ。評判通りブライアン・デ・パルマっぽかったりもする。トンネルを抜けて出現する「煙とネオンにまみれた異世界」ってシーンはスタンリー・キューブリックアイズ・ワイド・シャット』を想起させた。う〜ん、だけれど印象に残らない。真面目すぎるのかな。【不完全だろうと押し切る爆発的インパクト】が欠如してる。

【ネタバレ感想】
 結局は今流行りの『ブラック・スワン』系統。ヒロインの精神世界を展開させるダークな作品。ヒロインが他人を刺したと思ったら自分を刺していた…ってシーンも『ブラック・スワン』に似てる。だけど、それならば北川景子には分不相応な役柄じゃないか。病んでる役が似合うわけでも、技巧で表現できるわけでもないんだから。
 ラストの高良健吾はなんなんだ、って謎も残る。彼は、刑事に「北川景子フカキョンは貴方にとって違う人間なのか?」と聞かれて変な表情をする。友達を殺されたって言うのに見舞いへ行く。普通に考えれば、信者レベルでヒロインに惚れているのか。そもそも、この映画、病院のシーンから不自然。舞台は現代なのに北川景子が置かれるのは野戦病院みたいな病室。あんなにベッドがあるのに、北川以外の患者は動きもしない。「高良健吾は第五の人格なんじゃないか」どころか「映画は全部妄想だった」ともとれる。
 おまけ。高良健吾の家族写真を見た時の北川景子は不機嫌のような、失望のような反応をする。マリ=北川の伏線になっている。

(丸の内TOEIにて鑑賞)