恋の罪★★〜美津子は罪悪感の化身〜
「あたしの所まで堕ちてきなッーー!!!」 "堕"、又は"落"という表現を用いる時点で、美津子は「自分が標準平均より下にいる」認識を持っている。純粋たる狂人ではないのだ。そう捉えると非常にミクロな話に見えてくる。
【ネタバレ感想】
要するに「家庭問題発コンプレックスから抜け出せずセックス依存症になった女が、他の女を道連れにしようとした」「死にたい女が殺してくれる女を利用した」ってだけなんじゃないの。度々引用される『帰途』は名詩であるが、それにしても、美津子が言葉を用いて罪悪感から逃避する為の道具に過ぎない。そもそも彼女が求める城にしても『カフカの城』なんだから、辿りつけたとしても永遠の迷子じゃん。
では、本作はどのようなテーマを持つのか?下記の監督インタビューにそれが語られている。
参照;http://www.pia.co.jp/chubu/starcat/ent/1110282.html
いずみは、美津子が「抑圧からの解放」としてのセックスに準じている人物だと思ったから彼女を仰いだ。しかしながら、結局、美津子のセックスは男性に向けられたもの=男性コンプレックス由来だと発覚する。「性行為=生を実感するデバイス」と捉えるいずみは美津子の下を去り、社会的に堕落しようと幸福を感じ満面の笑みを携えていた。…ってことで、いずみが一番世間的常識からは離れていた人格だった、ってオチらしい。美津子と吉田刑事のセックスはある意味の自傷。いずみのセックスだけは自慰。解説を聞くと中々面白いんだけど、それなら、いずみのセックス観とか結末での幸福をもっと丁寧に描くべきじゃなかったのか。
あと、東電OLを下敷きにしていることが喧伝されるけど、流石に「母親が娘を殺害した」ってオチは問題では…。実在の事件にインスピレーションされ生まれた作品、程度のコメントで良かった。
(DVDにて鑑賞)