エイリアン4★★★★〜望まれなかった子どもたち〜


 Alienとは「外国」のことで、1,2におけるエイリアンとは人間たちのことではないか?そして真の敵役は、権力欲に走り同じ人類までも生贄にする企業、軍の者たちだ。そんな『エイリアン』シリーズの隠された主題を真正面から描いた傑作。
 前作の感想でリプリーは「被害者としてのエイリアン」を理解している、と書いたが、今回の彼女は人間よりもエイリアンに肩入れしてるよう。で、エイリアンだけど、今回は買ってに生まれてきたわけではない。人間によって蘇生"させられた"のだ。そんな彼はリプリーの身体から出現したもので、彼女を母として慕ってしまったのだからさぁ大変。

一体誰がエイリアンを悪と断罪することができると言うのか。

【ネタバレ感想】
 本作のエイリアン…リプリーの子ども・ニューボーンはとっても可哀想である。人間に誕生させられて、生きる為に本能に従っただけなのに、母親に殺害される。リプリーに見殺しにされた時の表情は「お母さん、なんで僕を殺すの!?助けて!!!!」と涙を流しているかのよう。その死に方もシリーズ中最も悲惨なものだ(シリーズ定番の「宇宙空間へポイ」をなぞった上でこの方法を編み出した監督は巧いですね)。
 「子殺し」を行った母・リプリーが悪いかと言うと、そうではない。彼女もまた誕生"させられた"存在。そのことは7人の自分を焼き殺すシーンで強調されている。誰が悪いかと言うと勿論強欲に塗れた人間で、そのような者はいつの時代も居ることが敵役変更=ウェイランドユタニ社消滅によって提示される。そもそもブラック企業に非道な指令を下されなければ、そもそもブラック企業がエイリアンの軍事利用など目論まなかったら、そもそも軍が蘇生しなければ、彼女は「3人の子ども」を失うこともなかった。リプリーは「子ども」を3人も企業・軍によって殺されている被害者だ。
 振り返ればこの映画には「望まれなかった子どもたち」が多い。又は「人間社会に規定された価値観によって差別される者たち」。ニューボーンを筆頭に、序盤「生かすか殺すか」適当に審議されるリプリー、アンドロイド、障碍者…。なんの罪を犯したわけではない彼らを「被差別」とした人間たちの掃き溜め・地球が最後に姿を見せる。本作における地球は、環境破壊し尽くされ登場人物に「あんなところに行く位なら此処(宇宙船)の方がマシ」と言われている。なんだか地球自体が「人間の汚い欲望」の象徴みたい。そんな星を見て、リプリーは何を想っただろう?アンチ・ヒューマニズムの傑作。

(DVDにて鑑賞)

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